2020年4月アーカイブ

 原油に関しては、国際価格の下落が始まったのは最近ではない。石油輸出国機構(OPEC)の盟主であるサウジアラビアが14年秋以降、頑として減産に応じず、シェアの維持にこだわって、価格低下を容認してきた経緯がある。なぜか。

 一つの理由は、生産コストの高いシェール原油が米国で生産を伸ばしているため、減産によって原油価格が上昇すれば、シェール原油を利するからだ。しかし、もう一つの理由は政治的であり、イスラム教シーア派が支配する国家として中東地域で革命を輸出し、テロ組織を支援してきたイランとの覇権争いが背景にある。原油価格の低迷は、石油輸出に頼るイランを苦しめる。豊富な外貨準備高を誇るサウジならではの「武器」が原油安でもある。

 そのサウジが、年初早々の1月2日に国内少数派であるシーア派(人口の10~15%)の指導者ニムル師を含む47人の処刑を実行。怒ったイランの大衆がテヘランのサウジ大使館に乱入するや、3日には対イラン断交に踏み切った。ニムル師を処刑すれば、イランが怒る。それを利用して断交し、緊張を高めるのがサウジの戦略とみる専門家もいる。

 サウジでは1年前の15年1月に当時のアブドラ国王が死去し、現在のサルマン国王が即位した。その後、ムハンマド内相が皇太子に昇格し、国王子息のムハンマド国防相が副皇太子に起用される抜てき人事があった。ムハンマド副皇太子は30歳前後であり、サウジでは異例の昇進である。同副皇太子は国王が後ろ盾だからか、あるいは若さ故か、以前と比べてはるかに積極的で攻撃的な外交・軍事政策を展開し、南隣のイエメンへの軍事介入などの強硬策を推進してきたといわれる。

 イランを挑発するニムル師処刑は、サウジ王室の対外姿勢の変質を象徴するものであり、今後中東地域でイランとの確執がどのように展開していくかのカギを握っている。

戸川利郎(naoyakiyohar5)



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